
霧ケ峰高原のこと
霧ケ峰高原は東京から車で約3時間、諏訪湖の北東に位置するなだらかな高原です。標高は1500m~1925m(車山)、広さは東西10km・南北15kmにわたります。山域全体にわたって高木の少ない草原や湿原が広がり、日本離れした開放感のある風景が楽しめます。名前の通り霧が出る日も多く、霧に包まれた湿原に柔らかな光が差し込めば、息をのむような幻想的な風景に出会えます。野鳥や動物たちとの出会い、芽吹き、草花、紅葉、雪原と一年を通じて様々な魅力にあふれ、「通うほどに奥深くなっていく」そんな山です。
太古から続く人と自然の関わり
霧ケ峰は狩猟採集の時代には狩りの場だったと考えられています。石器や矢じりの材料とされた黒曜石の原産地に近く、八島湿原の周辺には、その黒曜石を加工したり使用したとされる旧石器時代の遺跡が複数あります。
そこから生じた狩猟信仰は、全国的にも影響力のあるものとして様々な歴史を重ねてきました。ヒュッテみさやまが建つ「旧御射山」は、「何日も泊まり込みで狩りをして、鹿などの贄を神にささげた場所」と言われています。

大草原が広がる理由
見渡す限りの草原は、自然と人々が深くかかわってきた証です。冬期の低温や強風など樹木が育ちにくい自然環境に加えて、長年続けられてきた人々の活動が、動植物豊かな半自然草原を育んで来ました。
長野県環境保全研究所の研究では、その歴史は縄文時代にまで遡ると考えられています。「火入れ」によって生成される「黒ボク土」が約5800年前から連続して堆積しているというのです。近世には、地元の人々が牛馬の餌を得るための草刈りの山として、「秋に草を刈り、春に野焼きをする」という営みを長年続けてきました。
詳しくは、環境保全研究所のホームページへ
とても分かりやすく解説されています。
水の旅
八島湿原は標高1620m。1周3.7kmの広い凹地に発達した高層湿原です。(湿原の詳細は、八島ビジターセンターのHPで見られます。)
その湿原の水は御射山から観音沢となって流れ出し、諏訪大社春宮の横を流れて諏訪湖にそそいでいます。やがては、天竜川となって太平洋へと向かう「水の旅」の出発点が八島湿原なのです。
足腰に自信のある方は、諏訪湖から八島湿原まで、または湿原から諏訪湖まで、この「水の道」をたどって歩くこともできます。流域は一部に原生的な雰囲気の漂う森林が広がっていて、背の高い木々を透かして差し込む日の光や苔むした岩の間を流れる水流が印象的です。
面白いのは動物たちの暮らしぶり。御射山から10分も歩けば、全く生息する鳥の種類が違ったり、花の咲く時期がずれていたり、人の多い草原を避けた鹿たちが佇んでいたり…。霧ケ峰高原は、平坦な草原環境だけでなく、こうした森林地帯と対になって豊かな動植物を育んでいるのです。この両方の環境を行き来すると、自然の持つ「物語性」をより深く感じることが出来ると思います。
観音沢
「小屋番の見た風景」ではヒュッテに暮らして感じた、霧ヶ峰の魅力を紹介しています。