動物たち
昼間は賑やかな高原も、日が傾き、人が少ない時間帯になると動物たちが姿を現します。
最も身近にみられる大型の動物はニホンジカ。その個体数の多さから食害なども問題となっていますが、彼らもこの高原の住人です。御射山に長く暮らしているといろいろな出会いがありました。
小屋のそばで
霧の濃いある日のこと。
夕暮れが近づき、仕事の合間に10分ほどの小散歩に出ました。
秋も深まり、みさやまの周囲はすっかり背の高いススキに囲まれています。サラサラというススキの揺れる音を聴きながら、草原と林の間の砂利道を歩いていると、前方右手から一等の鹿がひょこっと現れました。全く予期せぬ出会いに、少しだけ心臓の音が早くなります。
相手もこんな秋の霧深い夕暮れに、人がいるとは思っていなかったのかもしれません。一瞬動きを止めて、訝しげにこちらを見やった後、左の林になかへ足早に駆けていきました。
人の気配が少ない季節は、どこかしら動物たちも悠々としているように見えます。お邪魔しているのは私たち。あまり驚かさないように静かに暮らしたいと思っています。

迷子の小鹿
6月の上旬、ぽかぽかと暖かい日でした。
たまたま遊びに来ていた父が「小鹿が人について歩いていたよ」と声をかけてきました。「そんなことないでしょ!?」と半信半疑で小屋の外に出ると、一人の男性の後ろをひょこひょこと歩く小鹿の姿。これには本当に驚きました。
男性に聞くと、近くで出会ってついてきてしまったとのこと。
どうやら母親とはぐれてしまったようです。
6月は鹿の出産シーズンです。この小鹿が生まれてどのくらいなかはわかりませんが、まだ人に対する警戒心が宿っていないのかもしれません。大きさは子犬くらい…想像以上に小さいです。
くりくりと大きな目や足元に駆けよる人なつっこいしぐさ、生命の純粋で無垢な姿に心和む体験となりました。
「あまり人のそばにいると、母ジカのもとに帰れないかもしれない」ということで、数枚写真を撮らせてもらってから離れてみていると、草原の方にトコトコと歩いていきました。無事に大きく育っていることを願っています。
八島ヶ池にて
夕暮れ時の八島湿原。水辺で小さな鹿が一頭佇んでいました。
水面に口をつけて水を飲んでいるようです。
野生動物は周囲の状況に敏感で、大体私たちが気付く前に逃げてしまうので、その「素の姿」を見ることはめずらしいです。今回はたまたまのラッキー。せっかくの彼らの日常を邪魔したくなくて、そっと見送って小屋への道を急ぎました。
※現在八島湿原には増えすぎた鹿から湿原を守るため一周を囲む鹿柵が設置されています。
柵が設置される前は、湿原の真ん中で悠々と過ごす鹿の姿がよく見られたものでした。
雄鹿
秋(9月末から10月頃)は鹿の繁殖シーズン。
普段は臆病な雄鹿も、この季節になると堂々としてくるようで、近くで出会っても逃げずにじっとこちらを見つめてくるような時があります。アピールのために泥を塗って真黒になった姿とどこか悟ったような眼差しが神妙です。
この季節の高原には、鹿の悲しく泣き叫ぶような遠吠えが響き、オスジカがメスを呼ぶ声といわれています。
その他の動物たち
霧ケ峰高原には、鹿のほかにもキツネ、タヌキ、アナグマ、ウサギなど沢山の小動物が暮らしています。皆、すばしっこいので写真は残っていませんが、湿原の周囲でもしばしば出会うことが出来ます。周辺の森にはツキノワグマも生息していて、稀に高原の方にも上がってくるようです。昔はカモシカも時々見かけたのですが、最近見かけず、どこでどうしているのだろうと思っています。
是非静かに山を歩いてみてください。
どこかで動物たちとの出会いが待っているかもしれません。